本の泉 清冽なる本の魅力が湧き出でる場所…

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第124回 2011年6月23日


●執筆者紹介●


広沢友樹

「本の泉」執筆メンバー
有隣堂アトレ新浦安店
文芸書・コミック等を担当

書評と建築、
そして居心地の良いカフェや図書館が好きです。


加藤泉

「本の泉」執筆リーダー
有隣堂アトレ恵比寿店

仕事をしていない時は
ほぼ本を読んでいる
尼僧のような生活を送っている。

磯野真一郎

「本の泉」執筆メンバー
有隣堂 販売促進室
書籍仕入・販促担当

晴れて気持ちのいい休日は、
自転車で遠くの公園に出掛けて本を読んでいます。

岩堀華江

「本の泉」執筆メンバー
有隣堂厚木店
文芸書・文庫を担当

本と映画、そして音楽がないと生きていけないと思っています。

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開講 オトナ学講座

AKB総選挙も終わり、そろそろ落ち着いた日常を取り戻したいと思っている皆さんにお勧めしたい、
人生の先輩たちが描くオトナの物語をご紹介します。


  蓮見圭一『別れの時まで

水曜の朝、午前三時』の著者の10年ぶりの長編小説です。「10年ぶり」という時間の積み重ねを感じる魅力的な言葉の響きや、落ち着いた装丁、そして手にしっくりくる厚さは大人の読書に相応しいものだと思います。

妻と死別し、娘を育てる40歳目前の編集者松永は、家族というテーマで応募されてきた手記のなかから、9歳の息子との日常を綴った毛利伊都子の作品に目を留めます。「息子は父親を早くになくし」とだけ書いた毛利とのインタビューをきっかけに深まるふたりの交友が描かれます。

30代も半ばを過ぎると「恋愛」という言葉が気恥ずかしくなる瞬間があるように思います。互いが好ましいとか愛おしいという想いは静かに伝わり、距離は縮まっていきます。体を重ねる場面は、とても情熱的でありながら、品があり、この作品の静かなイメージをまったく壊していません。それがゆえに彼女の秘密の結末は切なく、毛利伊都子というひとりの女性の生き様が心にグッと迫ってくるのです。

時々、松永が呟く「正しい意見は人を傷つけることが多い」というようなニュアンスに、私はなんだか寂しくなります。


 
別れの時まで・表紙画像
別れの時まで

蓮見圭一:著
小学館
1,575円(5%税込)

  西炯子『姉の結婚

静かなプチ老後生活を送るために帰郷し図書館で働いていた独身アラフォーの岩谷ヨリの身には「もう何も起こるまい」と思われていた矢先、彼女の前に、大学講師にして精神科医おまけに超イケメンの真木誠が現れます。真木の彼女への迫り方は尋常ではなく、肉食系男子のお手本として、いやそれ強引過ぎるだろ(笑)という笑いどころが満載です。

中学時代の恋心から20年以上を経て、ここまで追いかけるのも正直怖いものがありますが、一巻で彼はこんなことを言うのです。「あなたはほどほどの愛しか知らない」と。愛にはウンザリしている岩谷の過去に何があったのか…。続きが楽しみです。


 
姉の結婚・表紙画像

姉の結婚 1

西炯子
:著
小学館
420円(5%税込)

  伊集院静『大人の流儀

今回「オトナ」で選書しようと思ったきっかけが、この『大人の流儀』が店頭で大変好評だったからです。歳を重ねてふと気付くと、まわりからマナーとかお礼状、何回忌なんていう言葉を耳にすることが多くなり、気遣いや振る舞いの品格が問われる世の中になっていることにあたふたします。この本はそのような実用書の類ではなく、60歳を迎えなお精悍な風貌をもつ作家伊集院静が、自身の生き様を記したエッセイの数々が詰まっています。

伊集院静でなければ『大人の流儀』はここまで売れていなかったことでしょう。氏の何が大人の魅力となっているのか? それは小説作品という以外にも、愛する人を失い、ギャンブルと酒に溺れてもなおそこから立ち直り、人間との縁とつきあいを大切にし、銀座に詳しいだけでなく世界への見聞も広い…、そんな氏の骨太な人生が大人として尊敬されている証であるように私には思われます。

「大人の仲間入りをする君たちへ」という章には、新成人に8つの心掛けが挙げられています。ひとつくらい実行してみなさいと述べています。

「八、今はこう言ってもすぐにはわからないだろうが、周囲の人を大切にしろ。家族、友、恩師…。」

まだまだ大人への道半ば・・・です。

 
大人の流儀・表紙画像
大人の流儀

伊集院静:著
講談社
980円(5%税込)
 

文・広沢友樹


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