本の泉 清冽なる本の魅力が湧き出でる場所…

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第127回 2011年8月4日


●執筆者紹介●


岩堀華江

「本の泉」執筆メンバー
有隣堂厚木店
文芸書・文庫を担当

本と映画、そして音楽がないと生きていけないと思っています。


加藤泉

「本の泉」執筆リーダー
有隣堂アトレ恵比寿店

仕事をしていない時は
ほぼ本を読んでいる
尼僧のような生活を送っている。

磯野真一郎

「本の泉」執筆メンバー
有隣堂 販売促進室
書籍仕入・販促担当

晴れて気持ちのいい休日は、
自転車で遠くの公園に出掛けて本を読んでいます。

広沢友樹

「本の泉」執筆メンバー
有隣堂アトレ新浦安店
文芸書・コミック等を担当

書評と建築、
そして居心地の良いカフェや図書館が好きです。

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自転車、始めてみませんか?

ヨーロッパでは、サッカーに次ぐ人気がある自転車ロードレースも、残念なことに、日本では、あまりレースを目にする機会もなく、まだまだ馴染みがありません。
自転車レースは速いだけでは、勝てません。戦略やレース中の駆け引きなどが重要です。選手の思惑が絡み合い、思いもよらぬ結果を生むこともあります。そこが、面白いのです。

今回ご紹介する本は、自転車レースに対する知識が全くなくても、物語が進むにつれ、自転車レースとはどういうものか、その面白さが分かってくるので、安心してお読みください。
もしかしたら、本を読んだ次の日には自転車レースの面白さにはまり、自転車の雑誌をめくっているかもしれません。



  それでは、『サヴァイヴ』(近藤史恵)からご紹介します。

プロのロードレース選手のチカを主人公とした、シリーズの3作目です。
前2作がレースをメインに描かれたのに対し、今回は、チカを初めとする登場人物達の内面を描いた短編集です。

このシリーズを初めて読むという方でも、充分楽しめます、と言いたいところですが、やはり、1作目の『サクリファイス』とあわせて読んでいただきたいです。
サクリファイス』の坂道を下るかのような疾走感、ロードレースへの熱き想いがあるからこそ、この『サヴァイヴ』で描かれている、彼らの将来への不安や絶望、痛みといった影の部分をより深く感じとることができるのです。

自分の中に吹く重く湿った風に立ち向かい、ゴールのさらに先にあるものを目指し、走り続ける。その姿は眩しい。

ますます、このシリーズが好きになりました。


 
サヴァイヴ・表紙画像
サヴァイヴ

近藤史恵:著
新潮社
1,470円(5%税込)
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サクリファイス・表紙画像
サクリファイス

新潮文庫
460円(5%税込)
エデン・表紙画像
エデン

新潮社
1,470円(5%税込)

  次は『ヒルクライマー』(高千穂遙)です。

自転車で山に登る「ヒルクライムレース」に取り憑かれた者たちの熱き物語です。

従兄から形見として遺された1台のロードバイクをきっかけに、礼二は様々な人に出会い、ヒルクライムの面白さに引き込まれていきます。個性豊かな仲間とともに猛特訓を続け、頂点を目指す礼二。自分のすべてを賭けられるものと出会えた彼らが、とても羨ましいです。

「なぜ坂に登るのか?」苦しくキツい上り坂、心臓は爆発寸前。どんなに厳しくても彼らはペダルを踏み続けます。長い坂の果てになにがあるのか?それは登った者にしかわからない。でも、この本を読むと、言葉ではうまく言えないけれど、その何かが少しわかる気がしました。

作者の高千穂氏は、自転車に乗る楽しさに取り憑かれてしまったうちのおひとりです。
御自身で書かれているように、ストレートな物語で、自転車に乗る喜びがビシビシ伝わってきます。きっとほとんどの方が「ロードバイクに乗りたい!」という衝動に襲われたことでしょう。
私も秋ごろから始めてみようかなぁと現在検討中です。


 
ヒルクライマー・表紙画像

ヒルクライマー

高千穂遥
:著
小学館文庫
690円(5%税込)

  最後は『あねチャリ』です。

ズバリ、女の子が競輪を走る物語です。

引きこもりから抜け出す決意をした、主人公・凛はママチャリでサイクリングを始め、いつしか自転車で競う楽しさに目覚めていきます。
怪物と呼ばれた元競輪選手と出会い、親との諍いの末、高校を退学し彼に弟子入りまでしてしまいます。
素人の女の子だからと軽く見られたり、挫折を繰り返したりしても、折れずに前へ進んでいく、そのひたむきな姿は誰しも応援したくなり、実際に凛みたいな選手がいたら、間違いなくファンになっていたことでしょう。

この本を読んでいたら、子供のころ、よく自転車で、行き先を決めず走ったことを思い出し、懐かしくなりました。
私も凛と同じく、昔から自転車が好きだったんだなぁ。


 
あねチャリ・表紙画像
あねチャリ

川西蘭:著
小学館
1,365円(5%税込)
 

文・岩堀華江


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