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第136回 2012年1月7日


●執筆者紹介●


加藤泉

有隣堂ヨドバシAKIBA店

仕事をしていない時はほぼ本を読んでいる、尼僧のような生活を送っている。


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~第146回直木賞大予想!~
 

(この鼎談はフィクションであり、実在する人物・小説上の人物とは関係ありません)


 
平尾才助
(55歳…書店員歴33年)

悠木和雅
(44歳…書店員歴15年)

野口魚子
(33歳…書店員歴6年)












  悠木:   さあ、またもや直木賞の季節がやってまいりました。
  野口:   今回も私たちは本命・対抗・大穴と予想しなくてはならない辛い立場にいます。
  平尾:   毎度のことながら、誰にも頼まれてないけどな。
  悠木:   今回は候補作6作のうち初候補の作家の作品が4作です。
  野口:   フレッシュ! フレッシュ! フレッシュ! フレッシュ! ですね。
  平尾:   今回も前回に引き続いて意外な顔ぶれだな。
  悠木:   今回も本当に予想するのが難しいですね。
  野口:   はい。ここだけの話、前回の予想は楽でしたが今回は本当に難しいですね。
  平尾:   ま、外れてもともとのつもりで気楽にやろうぜ。我々の使命はお客様に少しでも興味を持っていただくことなんだから。




蜩ノ記・表紙画像
蜩ノ記
葉室麟:著

祥伝社
1,890円
(5%税込)











   本命・葉室麟 『蜩ノ記』 (祥伝社)
 
  平尾:   葉室麟は5回目の候補だな。
  野口:   いよいよですね! いよいよ我らが葉室さん、受賞の機が熟しました!
  悠木:   おいおい、まだ受賞と決まったわけじゃないぞ。
  平尾:   いや、この作品は葉室麟の本領発揮だろう。
  野口:   読み終えて涙が止まらなかったです! 葉室さんのこういう作品を待っていたんです!
  平尾:   武士の矜持を描かせたらピカイチだな。
  野口:   そうなんです! 正直言って、最近の葉室さんの候補作には歯痒いものを感じていたんですが、『蜩ノ記』はこれぞ葉室麟!と胸を張ってお客様にお勧めできる作品です。
  悠木:   ただ、時代小説に対して選考委員は厳しいですからね。油断はできませんよ。
  平尾:   お前は本当につまらない男だな。




夢違・表紙画像
夢違
恩田陸:著

角川書店
1,890円
(5%税込)





   対抗・恩田陸 『夢違』 (角川書店)
 
  平尾:   恩田陸は4回目の候補だな。
  悠木:   夢を映像としてデジタル化できる近未来が舞台の、恩田陸らしい作品ですね。
  野口:   怖かったです! それこそ夢でうなされそうでした。
  悠木:   読者に夢か現実か分からなくさせるこの力量は流石の一言です。
  平尾:   ただな~、ラストに向けて失速しないか?
  野口:   むむ…、そういう声も多いですが、それも恩田さんらしいところです。
  悠木:   そうですね。そこを嫌がる選考委員がいると難しいでしょうね。




ラブレス・表紙画像
ラブレス
桜木紫乃:著

新潮社
1,680円
(5%税込)












   桜木紫乃 『ラブレス』 (新潮社)
 
  野口:   『ラブレス』キターッ!
  平尾:   初候補の作家の中から選ぶとすれば、伊東潤か桜木紫乃だろうな。
  悠木:   北海道の極貧の家を飛び出して旅芸人の一座に加わった主人公百合江という女性の生き様が見事に描かれています。
  野口:   とにかくカッコいいんですよ! 桜木さんの描く女性は。新刊『ワン・モア』の女性たちも実にカッコよかったです!
  平尾:   百合江というヒロインの半生を描きながら普遍的なことを訴えているんだよな。「幸せとは何か」という。
  悠木:   私は読んでいて、百合江の娘たちのパートは必要だったのかな、と疑問を持ちました。全く瑕疵のない作品ではないと思うんですがね。でもそれもこの作品の魅力になっているという、不思議な作品です。
  平尾:   まあ、候補になっただけですごいことだよな。




城を噛ませた男・表紙画像

城を噛ませた男

伊東潤:著

光文社
各1,785円
(5%税込)








   伊東潤 『城を噛ませた男』 (光文社)
 
  野口:   この著者の作品を初めて読んだのですが、面白かったです!
  悠木:   時代小説の分野では既に短編の名手として名を馳せている作家です。
  平尾:   時代小説の中でこういう短編集が候補になるのは珍しいよな。
  悠木:   はい。著者の出身が神奈川県横浜市ということで、関東地方を舞台にした短編集ですね。戦国時代に力を持っていなかったこの地方にスポットをあてています。
  野口:   ヨコハマ!我々としては応援したいところですね。
  平尾:   見張りだったり、鯨捕りだったり、地侍の視点を取り入れているのが面白いよな。
  悠木:   はい。この作品でこの作家の存在を知る読者も多いと思います。候補になって本当に良かったです。




春から夏、やがて冬・表紙画像
春から夏、やがて冬
歌野晶午:著

文藝春秋
1,575円
(5%税込)







   歌野晶午 『春から夏、やがて冬』 (文藝春秋)
 
  平尾:   歌野晶午が候補になるとは!
  悠木:   スーパーの保安責任者の男と、店で万引きを働いた女。この2人が出会ってどういう結末が待っているのか。いやぁ、読まされました。
  野口:   しかもこの女性は家庭でDVを受けているんですよね。重かったです。
  平尾:   歌野晶午っていうとドンデン返しのミステリ作家ってイメージがあるけどな、この作品は、確かに驚きも待っているけれど、過酷な状況の中で必死に生きている人間の姿をきちんと読まなきゃいけない作品だよな。
  野口:   珍しく真面目なことおっしゃいますね。
  平尾:   えへへ。
  悠木:   選考委員の反応がとても気になる作品ですね。





コラプティオ・表紙画像
コラプティオ
真山仁:著

文藝春秋
1,800円
(5%税込)











   真山仁 『コラプティオ』 (文藝春秋)
 
  平尾:   物議を醸すといったらこの作品だろう。
  悠木:   東日本大震災、原発事故が起きて3年後の日本が舞台の作品です。原発推進のカリスマ総理が現れたとき、日本はどうなるか。
  野口:   政治小説と思って読み始めたのですが、後半、アフリカの問題も絡んできたりして、前回候補になった『ジェノサイド』をところどころで思い出しました。
  平尾:   でもよぉ、政治が絡むと小説は難しいよな。モデルになった人物の顔がチラチラ浮かんできて。ほら、ジブリ映画で有名人が声優をやると集中できないだろ。あれに似てるな。
  悠木:   その喩えが上手いかどうかは分かりませんが、この作品はテーマがテーマだけに受賞するのは難しいかもしれません。ただ、「正義って何だ」と世に問いかける作品ではあると思います。
  平尾:   えへへ。
  野口:   今から選評が楽しみですね!



 











  平尾:   以上、言いたい放題だったが、今回も力のある作品が出揃ったな。
  悠木:   時代小説からもミステリーからも初候補の作家が出てきて、広がりを感じますね。
  野口:   はい。皆様にも是非全作品お読みいただいて予想してほしいですね。
  悠木:   ちなみに第146回直木賞、発表は1月17日(火)夜!!
  平尾:   「該当作なし」だけは何としても避けてほしいな。

 
文・加藤泉


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