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第6回 2006年7月27日

●執筆者紹介●


加藤泉
有隣堂読書推進委員。

仕事をしていない時はほぼ本を読んでいる尼僧のような生活を送っている。

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   〜ミナト応援団結成!の巻〜 対談
有隣堂厚木店・佐伯/有隣堂読書推進委員・加藤
 
   〜はじめに〜
おすすめの
「朱川湊人作品」

◇佐伯おすすめ

1位『花まんま』
2位『わくらば日記』
3位 それ以外の全て

◇加藤おすすめ
1位『わくらば日記』
2位『かたみ歌』
3位『花まんま』
 加藤: 今回は朱川湊人さんの書かれる作品のすばらしさをより多くの方々に知っていただくために、朱川湊人私設応援団団長をお招きいたしました。 有隣堂厚木店の佐伯敦子さんです。
 
 佐伯: 副団長の加藤さん、こんにちは。 この対談のために世界で一番朱川作品を読んでいるのではないか、と言われるくらい朱川さんの作品を読みこんできました。 もう他人とは思えません。 朱川さんのこと、ミナトって呼んでもいいですか?
 
 加藤: 私は止めません。
 
 佐伯: すでに直木賞をとっているような作家を、あえて紹介しようと思ったのはなぜですか?
 
 加藤: 私の中で朱川さんは、"作品の質と売れ行きが反比例している作家№ 1"なんです。
 
 佐伯: それはあまり嬉しくない称号ですね。
 
 加藤: はい。 もっともっと読まれてもいい作家だと思い、今回は採り上げました。 それでは、佐伯さんのお好きな作品から解説していただきましょう。
 

    『花まんま』

花まんま・表紙画像
花まんま

文藝春秋
1,650円
(5%税込)
 佐伯: 私にとってのベストワンは、『花まんま』です。
 
  加藤: 直木賞受賞作ですね。 私も、初めて読んだ朱川作品は『花まんま』でした。 私の中では第3位です。
 
 佐伯: え〜っ? どうして1位じゃないの〜?
 
 加藤: あ、あの、その、収録されている短編によって出来不出来の差が大きい短編集だと思ったんです。 あ、でも言い換えれば、それだけバラエティに富んだ短編集ということですよね。 佐伯さんはどの短編が良いと思われましたか?
 
 佐伯: 何と言っても表題作の『花まんま』ですね。 全ての人が読んだほうがいいと思います。
 
 加藤: 私も同意見です。 正直言って、この本が入荷してきた時、あまりにも暗い表紙に、ゲ〜ッと思ったのですが、一度表題作を読んでしまうと、この表紙の女の子を見るたびに、泣きながら抱き締めたくなる衝動に駆られるんです。 "キヨミ、キヨミなんやね〜"って。
 
 佐伯: あぁ、それは読んでいない人には全く分からない話ですね。 表題作『花まんま』は、時空を超えた親子のつながりを描いている作品です。 輪廻転生を書いている作品というのは数多くあると思うのですが、その中でもこれほど深い愛情を描いている作品はそうそうないと思います。 短編ですぐ読めるので、ミナト未体験の方には、まずこの作品から読んでほしいですね。
 

    『かたみ歌』

かたみ歌・表紙画像
かたみ歌

新潮社
1,470円
(5%税込)
 加藤: 『花まんま』の次に刊行された『かたみ歌』はいかがでしょう?
 
 佐伯: この作品も『花まんま』の路線をいった短編集ですよね。 ミナトは日本ホラー小説大賞を受賞してデビューしたこともあって基本はホラー作家だと思うんですが、『花まんま』や『かたみ歌』のような"ノスタルジー&ホラー路線"の作品のほうが圧倒的にいいですね。
 
 加藤: おっしゃるとおりです。 『かたみ歌』は、昭和30〜40年代、あの世とこの世を結ぶお寺がある東京の下町が舞台で、まぁ、いろんなことが起こるわけです。 私はこの本を読みながら人目も憚らず泣きました。
 
 佐伯: 『三丁目の夕日』に通じる世界ですね。
 
 加藤: はい。 それと、この本には包容力を感じるんですよね。
 
 佐伯: えっ?!
 
 加藤: 人間の弱さや狡さや醜さをしっかりと受け止めてくれる力を感じるんです。
 
 佐伯: ほぉ〜、そうですか。 分かりました、ミナトに伝えておきます。
 
 加藤: 友だちですかっ!
 

    『わくらば日記』

わくらば日記・表紙画像
わくらば日記

角川書店
1,470円
(5%税込)
 加藤: 私の一番好きな作品を挙げさせてください。 『わくらば日記』です。
 
 佐伯: これは、本当に素晴らしい作品ですよね。
 
 加藤: そうでしょう? 『花まんま』と同じくノスタルジー&ホラー路線ですが、ユーモアの要素が加わったところに朱川湊人の余裕、というか、サービス精神を感じます。
 
 佐伯: キャラクターが生き生きしてますよね。 人の記憶を読み取ったり、ある場所で以前起こった出来事を見ることができる、不思議な能力を持つ姉と、語り手の妹がいて、良妻賢母でいながら柔道四段の母親や、ある事件を通して姉妹が出会う茜という少女や刑事の百合丸さんなど、人物の造型が本当にすばらしい。
 
 加藤: 装丁もいいですよね。 朱川さんの著作の中ではベストワンだと思います。
 
 佐伯: この本の中の「この世で一番悪いことは人の命を取ることです。 その次に悪いのは、信頼を裏切ることです」というセリフが印象的です。
 
 加藤: 『わくらば日記』を読んでこの著者の優しさについて考えたのですが、朱川さんには"人間は皆同じ"という確固たる人生観、人間観があると思うんです。
 
 佐伯: あぁ、それは全ての作品に通じることですね。
 
 加藤: もっと読まれていい作品ですね。
 
 佐伯: ほんと、よしもとばななぐらい売れてもいいと思います。
 
 加藤: シリーズ化を熱烈に希望します。
 
 佐伯: 映画化されてもいいぐらいですよね。
 

    『赤々煉恋』

赤々煉恋・表紙画像
赤々煉恋

東京創元社
1,680円
(5%税込)
 加藤: 最後に、最新刊『赤々煉恋』はいかがでしょう?
 
 佐伯: ミナトの原点に戻ったような短編集ですね。 背筋がぞっとするようなホラーです。 個人的には、ミナトよ、もっとほのぼのするものを書いておくれ、と思いました。
 
 加藤: かなり官能的でもあるので、新たな読者層を開拓できるのでは、と私は思ってしまいましたが。
 
 佐伯: どの短編が良かったですか?
 
 加藤: 『私はフランソワ』ですね。
 
 佐伯: えぇ〜っ? あの猟奇的な?
 
 加藤: はい。 究極の恋愛小説だと思いました。 あの作品を読んでしまったらそのへんの恋愛小説が屁みたいに思えてきます。 最近の恋愛小説に食傷気味の方におすすめです。
 
 佐伯: 他にも東電OLの幽霊が出てくる短編があったりするので、はまる方には、はまるかもしれませんね。
 
 加藤: 『赤々煉恋』を読んでいてふと思ったんですけど、女性の一人語りが上手いですよね、朱川さんは。 太宰治を彷彿させます。
 
 佐伯: それはすごい褒め言葉ですね、ミナトに伝えておきます。
 
 加藤: だから、友だちですか!
 

朱川湊人プロフィール

1963年生まれ。 慶應義塾大学文学部卒業。

出版社勤務を経て、2002年「フクロウ男」で第41回オール讀物推理小説新人賞を受賞。

2003年『白い部屋で月の歌を』で第10回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。
花まんま』で第133回直木賞を受賞。

〜まだまだあります、朱川湊人作品〜
白い部屋で月の歌を・表紙画像 白い部屋で月の歌を (角川ホラー文庫)

同時収録されている「鉄柱」が特にオススメです!(佐伯)


角川書店・580円
(5%税込)
都市伝説セピア・表紙画像 都市伝説セピア (文春文庫)

「口さけ女」など、あの年代のあの事件がモデルなのでは?と思わせる 短編が満載。 (佐伯)


文藝春秋・500円

(5%税込)
さよならの空・表紙画像 さよならの空

環境問題について考えさせる異色作。 夕焼けがなくなったら、この世界は なんて味気ないんだろう。 (加藤)

角川書店・1,575円
(5%税込)

対談・ 厚木店 佐伯敦子
  読書推進委員 加藤泉
構成・ 宣伝課 矢島真理子

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