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第53回 2008年7月5日

●執筆者紹介●
 
加藤泉
有隣堂 読書推進委員。
仕事をしていない時はほぼ本を読んでいる尼僧のような生活を送っている。

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〜第139回 直木賞大予想〜
(この鼎談はフィクションであり、実在する人物・小説上の人物とは関係ありません)
 
平尾才助
(55歳…書店員歴33年)

悠木和雅
(44歳…書店員歴15年)

野口魚子
(33歳…書店員歴6年)
悠木:   さあ、いよいよ直木賞の季節がやってきました。
 
平尾:   いや〜、今回は予想するのが本当に難しい!
 
野口:   「外れてもともとのつもりで気楽にやろうぜ」っていつも言っているのは平尾さんじゃないですか!
 
悠木:   今回は該当作なしもあり得るという声が多いようですが、我々は本命・対抗・大穴と、きっちり予想していきましょう。 該当作なし、なんて作家の方に失礼ですからね。
 
野口:   はいっっ!!
 
平尾:   気合い入ってんな〜。
 



鼓笛隊の襲来・表紙画像
鼓笛隊の襲来

三崎亜記:著

光文社
1,470円
(5%税込)

カタツムリマーク 本命・三崎亜記 『鼓笛隊の襲来 (光文社)
 
悠木:   三崎亜記は3度目の候補です。
 
平尾:   この作家は受賞する力が十分にあるよな。
 
悠木:   はい。 ただひとつ懸念されるのは、今回の候補作が短編集だということです。
長編に比べると短編は分が悪いですから、直木賞では。
 
野口:   三崎亜記は短編のほうがいけるんじゃないかと私は思うんですけど…。
 
平尾:   鼓笛隊やら、象さんすべり台やらが、この作家の手にかかると想像もつかなかったものになるんだよな。
 
野口:   すごいイマジネーションですよね。 いっそ星新一のようなショートショートを書いてほしいです。
 
平尾:   今までの作品では、正直に言うとわしにはついていけないものがあって、突き放されたような気分にもなったんだけどな、今回は噛み砕いて説明してくれるような感じで、今までで一番読みやすかったな。
 
悠木:   確かに、それは大きいかもしれませんね。
選考委員は平尾さんと同じ年代の方が多いので、それは貴重な意見だと思います。
 



愛しの座敷わらし・表紙画像
愛しの座敷わらし

荻原浩:著

朝日新聞出版
各1,890円
(5%税込)

対抗・荻原浩 『愛しの座敷わらし (朝日新聞出版)
 
悠木:   荻原浩も3回目のノミネートです。
 
平尾:   そろそろかもな。
 
野口:   でも、この作品で受賞したら疑問の声もあがるのでは?
 
平尾:   それは今までにもよくあったことじゃないか。 宮部みゆきだって『火車』ではなく『理由』で、桐野夏生だって『OUT』ではなくて『柔らかな頬』で受賞してるからな。
 
野口:   荻原浩のこれまでの最高傑作と言われている『明日の記憶』は候補にさえならなかったですからね。
 
悠木   今回候補になった『愛しの座敷わらし』は、東京から田舎に異動になったサラリーマンが購入した田舎の一軒家に座敷わらしが住みついていた、という話です。
 
平尾:   この、父親のパートが効いているよな。 荻原浩はサラリーマンの悲哀を描かせると本当に巧いな。
 
野口   はい。 それに、私は座敷わらしって何なのかよく知らなかったのですが、この本を読んで、ああ、そういうものなのか、って分かりました。 悲しいですね。
 
平尾:   座敷わらしとは何か、童謡「しゃぼん玉」の歌詞に合わせて明かされるくだりは良かったよな。
 
悠木:   老若男女楽しめる作品ですね。
 
野口   前回受賞した『私の男』とは真逆です。
 



千両花嫁・表紙画像
千両花嫁
山本兼一:著

文藝春秋
1,700円
(5%税込)

大穴・山本兼一 『千両花嫁 (文藝春秋)
 
悠木:   山本兼一は2回目の候補です。
 
平尾:   巧い作家だよな。 去年『いっしん虎徹』が候補にならなかったのが今でも信じられない。
 
野口:   あの時は私たち荒れましたね。 朝まで飲んだくれましたから。
 
悠木:   そこまで思い入れがあったんですか!
 
野口:   そうですよ。
 
平尾:   ひょっとしたら今回はいけるんじゃないか。 作品に余裕のようなものも感じられるぞ。
 
野口:   表紙を見たとき、山本兼一じゃなくて山本一力の本かと思いました。
 
悠木:   この『千両花嫁』の舞台は幕末期の京都です。 道具屋を営んでいる若夫婦のもとに、坂本龍馬や近藤勇といった幕末の志士たちがぶらっと訪れたりして、幕末好きにはたまらない連作短編集です。
 
野口:   古道具の見極め方や人相見の薀蓄も面白いです。
 
平尾:   あと、何より、山本兼一の描く女性がいいんだよな。 しっかりしていて気が強くてでも旦那には優しくて。 理想の女房像だぞ、これは。
 
野口   ふ〜ん。
 



切羽へ・表紙画像
切羽へ
井上荒野:著

新潮社
1,575円
(5%税込)

井上荒野 『切羽へ (新潮社)
 
野口:   じゃあ、この『切羽へ』のヒロインは、平尾さん的にはNGですね。
妻イコール妖怪、と喩えられています。
 
悠木:   この作品は帯の文言に問題ありなのでは?
 
平尾:   ああ。 「彼に 惹かれて ゆく、夫を 愛して いるのに—」というやつだな。
どんだけすごい官能小説かと思うよな。
 
野口:   実際はいたってプラトニックです。 この作品は恋愛小説として読むよりも、離島に暮らす人たちの宿命的な寂しさのようなものを感じて読んだほうがはるかに面白いと思うのですが。
 
悠木:   確かに、これまでの井上荒野作品の中では、最も「場所」を意識した作品だと思います。 こういった作品を書き続けていったら…。
 
平尾:   いつかは受賞するだろうな。
 



のぼうの城・表紙画像
のぼうの城
和田竜:著

小学館
1,575円
(5%税込)

和田竜 『のぼうの城 (小学館)
 
悠木:   今話題の新人作家のデビュー作です。
 
平尾:   まさか候補になるとはな。
 
悠木:   天下統一を目指す秀吉の軍勢に、唯一屈しなかった「忍城」が舞台となっています。
 
平尾:   面白いのは、城主の成田長親が「でくのぼう」と呼ばれるほど無能だったということだ。
 
野口:   長親の下で戦う3人がいいキャラクターですね。
敵方の石田三成もこんなにいいヤツだったのか、と思いました。
 
平尾:   この作品は史実と虚構の塩梅が絶妙だな。
 
悠木:   ただ、時代小説で直木賞を狙うのは厳しいですからね。
どんなに面白くても「もう1作見たい」とされる可能性は高いでしょうね。
 



あぽやん・表紙画像
あぽやん
新野剛志:著

文藝春秋
1,890円
(5%税込)

新野剛志 『あぽやん (文藝春秋)
 
悠木:   新野剛志も初候補ですね。
 
野口:   困ったことに、この作品が今回の候補作の中で一番面白かったです。
 
悠木:   「あぽやん」の「あぽ」とは、「空港AIRPORT」の業界用語です。
「あぽやん」とは空港で働くツアー会社の社員のことで、この作品の中では出世コースから外れた者とされています。
 
野口:   本社から空港にいやいや左遷させられた29歳の主人公が、やりがいを見つけ前向きになっていく、というありきたりと言えばありきたりな話ですが、空港ならではのトラブルが読んでいて本当に面白かったです。
 
平尾:   団塊の世代にも身につまされるものがあったぞ。
 
悠木:   でも、この作家も「もう1作見てみたい」と言われるでしょうね。
 
野口:   う〜ん、残念ですが、私たちは「ぼすやん」として「あぽやん」を応援しましょう。
 
平尾:   何だ、その「ぼすやん」って?
 
野口:   ぼす=BOS(BOOKSTORE)の略ですよ!
 
平尾・
悠木:
  ………。


平尾:   以上、言いたい放題だったが、今回も力のある作品が出揃ったな。
 
野口:   はい。 是非、皆様にもお読みいただきたいですね。
 
悠木:   第139回直木賞、発表は7月15日の夜です! 皆様、お楽しみに!
 
 

文・読書推進委員 加藤泉

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