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第99回 2010年6月3日

●執筆者紹介●
 
加藤泉
有隣堂 読書推進委員。
仕事をしていない時はほぼ本を読んでいる尼僧のような生活を送っている。

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〜この時代小説がすごい! 其の弐〜
 
最近なぜか時代小説がマイブームである。 というわけで今回は、今おすすめの時代小説をご紹介したい。
 

 
 まず初めに、百田尚樹『影法師』を。
永遠の0(ゼロ)』で特攻隊を、『ボックス!』でボクシングを、そして『風の中のマリア』で蜂の世界を描いた鬼才、百田尚樹がまたスゴイ小説を書いてしまった! それが時代小説だというのだから驚きだ。 さらにそれが、個人的には今年のベスト1と言ってもおかしくないくらいの作品なのだから、これは「本の泉」をあげて大騒ぎをするしかないのである。

本書の舞台は茅島藩という架空の藩。 土佐藩のように、上士・中士・下士と厳しく身分が分かれている。 中士の家の次男に生まれながら没落していく磯貝彦四郎と、下士の家に生まれ破格の出世を成し遂げた戸田勘一(後の名倉彰蔵)。 竹馬の友であったこの2人の人生はどこで道を違えたのか? 戸田の視点から回想する形式で描かれている。

本書は一言で言えば、侍の心を持つ男を描いた小説だ。 いざという時に己の身を投げ出す覚悟を描いた小説だ。 つくづく感じたのは、武士の家に生まれれば誰でも侍にはなれるが、武士の家に生まれたからと言って誰もが侍の心を持てるわけではないということ。 時代小説ではあるが、ここに描かれた人の心の美しさは現代にも通じるものがある。 タイトル「影法師」の意味が分かったとき、読者は感動に打ち震えるはずだ。

漢(おとこ)の世界にどっぷり浸かりたい方に是非お読みいただきたい。

 
 
影法師・表紙画像
影法師


百田尚樹:著
講談社
1,680円
(5%税込)

 登場人物の名前がなかなか覚えられないから難しそうな時代小説は苦手…という方におすすめしたいのは、あさのあつこ『火群(ほむら)のごとく』を。

舞台は小舞藩という架空の藩。 主人公林弥(りんや)の兄結之丞(ゆいのじょう)が斬殺された数年後、林弥の前に樫井透馬という少年が現れる。 結之丞が江戸詰の折、剣の指南を受けていた透馬は、結之丞が殺されたことを知って小舞藩にやって来たと言う。 2人は犯人が誰なのか探ることにする…。      

互いの剣の才能を認め合いながら切磋琢磨していく少年の姿は、同著者の『バッテリー』を彷彿させる青春物語である。 己の才能を信じながら、そして恐れながら成長する少年たちの姿は読んでいて実にすがすがしい。 それに加えて、2人が事件の真相を探る過程はミステリーとしても面白い。 そう、この小説は、時代小説と青春小説とミステリーが融合したまことに贅沢な1冊なのである。

時代小説ビギナーの中高生にも是非読んでいただきたい。 続編が書かれることにも期待。

 
 
火群のごとく・表紙画像
火群のごとく

あさのあつこ:著
文藝春秋
1,575円
(5%税込)

  斬った斬られたの血なまぐささは苦手という女性には、杉本章子『春告鳥』を。

1月生まれから12月生まれまで、12人の女性を主人公にした短編集。 「女用知恵鑑」という占い本をネタに、それぞれの生まれ月の占いにまつわる、悲喜こもごもの物語が展開される。

たとえば、1月生まれの女性の運勢はこう書いてある。
「正月生まれの女は前世で神仏に仕えていたか、難に遭って死にかけている人を助けたとかで、天より福徳を授けられて名を現す夫を持つ」
なんだ、良いことしか書いてないじゃん、と思って2月生まれの章を読むと、
「二月生まれの女子は、前世において牛を一匹殺しておる。 その報いで、父母が早死にするか、あるいはまた、生んだ子が育たぬやもしれぬ」
ここまで読んだら、自分の生まれ月は一体何と書かれているのだろうかとドキドキしながらページを捲ることになる。

占い時代小説という趣向も面白いが、逆境にめげず己の運命を受け入れていきいきと生きる江戸の女たちが何とも魅力的だ。 この本を読んだら貴女も粋な江戸ジェンヌに近づけるやもしれません。

 
 
春告鳥・表紙画像
春告鳥


杉本章子:著
文藝春秋
1,650円
(5%税込)
 

文・読書推進委員 加藤泉

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