Web版 有鄰

526平成25年5月1日発行

禿頭の系譜 – 海辺の創造力

復本一郎

私の生れたのは愛媛県宇和島市。菩提寺は、同市内の佛海禅寺。5歳の時に父の仕事の関係で、当時の地番で言えば、横浜市磯子区磯子町278番地に転居した。昭和25年(1950)、横浜市立磯子小学校に入学。最初の担任は、武者リウ先生という若い女の先生だった。2学期に入る前にお産がもとで亡くなられた。葬儀に参列、涙がじわーっと出てきたことを覚えている。4年生の3学期に青木小学校へ転校した。5年、6年の担任細川宏先生は、正義感の強い、熱血漢でいらっしゃった。教育熱心であり、通信票の連絡欄に毎学期細かな字で注意事項をびっしりと書いて下さったのが強く印象に残っている。お亡くなりになられたとのこと。

今の住所への転居に伴い学区外の栗田谷中学校に進んだ。3年生の担任は、杉田浩一先生。図画工作を教えていただいた。画家で、太平洋美術会の会員でいらっしゃったようにお聞きしたことがある。御健在でいらっしゃる。このクラスは、団結力が強く、今でも数人が時々顔を合わせている。3年前に亡くなった柳澤基司君も、そんな仲間の1人であった。コソボフィルハーモニー交響楽団常任指揮者として活躍中の柳澤寿男さんは、令息である。

中学校を出て、仲間とともに神奈川県立横浜翠嵐高等学校に進学した。3年生の時に国語を教えていただいたのが笠松稲子先生。お茶の水女子大学出の才媛。昨年、十数年ぶりでお目にかかったが、90歳を過ぎてなお、昔のままに凛としておられた。腰の重い私に再会の機会を与えてくれたのが、高等学校時代の友人越村道夫君。御尊父は、マルクス経済学者故越村信三郎氏である。

自分が教師となり、そして教師を辞めてはや4年経ってみると、小学校以来の折々の先生方のことが、ふとしたことで思い出されることがある。

去る3月9日は神奈川新聞第四回ジュニア短歌・俳句・川柳大賞の授賞式、3月16日は、第15回神奈川大学全国高校生俳句大賞の授賞式だった。選者の1人として壇上で小学生、中学生、高校生を見ていると、自らの小学校、中学校、高等学校時代が、いくばくかの反省や悔恨とともに思い出されるのであった。先生方の思い出とともに。

神奈川大学全国高校生俳句大賞の創設以来、選考委員をお願いしているお一人に金子兜太先生がいらっしゃる。私は100年に1人の俳人であると確信している。全身全霊をもって俳句という文芸と格闘しているという点において。真剣勝負。そこが大いなる魅力。身近に接して、直接、間接に多くをお教えいただいている。うれしく、有難いことである。この金子兜太先生を高く評価し、折に触れてその「造型」論とともに俳句の素晴らしさを話して下さったのが、学窓外の恩師、俳文学者栗山理一先生であった。私が心酔する両先生、お2人とも禿頭。両先生に、不遜にも私自身を加えて、禿頭の系譜などと吹聴して喜んでいる。

(俳文学者・神奈川大学名誉教授)

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