Web版 有鄰

545平成28年7月10日発行

横浜での出会い – 海辺の創造力

北原照久

東京、京橋から横浜に移り住み、ブリキのおもちゃ博物館を開設してから今年の春で30年を迎えました。3日住めば浜っ子といいますから、僕は体の芯まですっかり浜っ子ですよね。

博物館という夢が実現したものの当初の僕には人脈がない、ノウハウもなくお金もなかった。あったのは、やる気と情熱とコレクションだけでした。そういう時に横浜の母と敬愛する、有ママこと有吉暉子さんと出会ったのです。近所にお住まいで、まるで少女のように目を輝かせながら博物館にいらしてくれました。僕たち夫婦を、あなたたちはよくがんばっていると褒めてもくださったので、軽い気持ちで、横浜の人間ではないので知り合いがいなくて大変ですと言うと、私は横浜の人をたくさん知っているから紹介してあげると言ってくださいました。有ママのお祖父様が横浜市長、お父様が日本郵船の会長、ご主人は三菱重工横浜製作所の特別顧問と、当時の僕には雲の上の人でしたが、それを微塵も感じさせない気さくな方でした。普段は会えそうもないすごい方、しかも有ママの感性に近い方々を博物館へ次々に連れて来てくれたのです。その人たちがまたどなたかを連れて来てくださるので、加速度的に横浜の方と知り合えて、仕事にもつながるようになったのです。

有ママは僕たちのことを「私の息子夫婦です」と言って紹介してくれるようになりました。光栄であると同時に、有ママの顔をつぶしてはならないとプレッシャーを感じながらも一生懸命に頑張りました。横浜での出会いが僕を成長させ、可能性を高めてくれたのは間違いありません。

今になって思うのは、精一杯頑張っていれば、やるべきことをきちんとやり続けていれば、必ず誰かがその人を応援するようにできているということです。いい出会いは本当に大切で、成功している人たちは誰もがいい出会いを重ね、活かしているということ。出会いはお金では買えないもの、狙って得られるものでもありません。自分を応援してくれる人を探しても、そう簡単に見つかるものでもないのです。では、どうしたらいい出会いが得られるか。自分がこれだと思ったことを、文字通り一心不乱にやり続ける。これが応援してくれる人と出会える一番の近道。多くの成功者にこの法則があてはまっていると思います。いい出会いがやってくるよう、常に自分を高めていなければダメなのです。生かされていることを感謝し、謙虚になって学び続けること。それが自然体でできるようになると、いい出会いがふーっと自然にやってきます。出会いは偶然のものではなく、必然だと実感できることが、今もあります。

横浜という街が僕を受け入れ、成長させてくれたことを感謝しています。開港以来育まれ、受け継がれてきた体質なのでしょう。初めてのものや新しいものを受け入れて、実におおらかです。藤木企業の藤木幸夫さん、ホテルニューグランドの原範行さん、元町バックのキタムラの北村宏さん、萬珍樓の林兼正さん。挙げたらきりがないほど、横浜での出会いはどんどん広がって行きました。人生はまさに出会いですね。

(横浜ブリキのおもちゃ博物館館長)

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