はな
昨年、亡くなった祖母の着物と帯を受け継ぎました。着付け教室に通い、どうにか自分の手で着物が着られるようになった頃、横浜にある実家に、祖母の着物と帯が山のように届きました。「ババ(祖母をそう呼んでいました)、この着物、良く着てたわねぇ」母と一緒に、積み重ねられた着物の中から、私が着られそうなものを1枚1枚選んでいると、ある文字がふと、目に飛び込んできました……松坂屋。
松坂屋と言えば、伊勢佐木町。伊勢佐木町と言えば、松坂屋。私がまだ小学生の頃、伊勢佐木町は横浜市民にとって、憩いの場でした。
日曜日になると、中華街に住んでいたババの家に集まった従兄弟と、毎週のように、松坂屋デパートに連れて行ってもらっていました。
おもちゃ売り場で何か買ってもらった後、松坂屋の前にあるサーティワンでアイスクリームか、不二家のチョコレートパフェを食べて、帰りに、有隣堂で本や色鉛筆やノートを物色……伊勢佐木町は、まさにお買い物&食べ物天国!ワクワク、ドキドキ、ウキウキ、全てが味わえる魔法のお散歩コースでした。
おもちゃとアイスクリームで、幸福の絶頂にいる私たち子供のテンションをさらに高めてくれたのは、有隣堂の存在でした。まだ洋書を扱うお店が少なかったため、インターナショナルスクールに通っていた私たちにとって、有隣堂はとても貴重なお店。
もちろん、パソコンも家庭にないような時代でしたし、ネットで本を買うなんて、想像上の世界でした。洋書が必要な時は、とりあえず有隣堂へgo!本を読むのがあまり好きじゃなかった私は、絵本のコーナーに入り浸っていましたが、世界中からあらゆるジャンルの本を取り扱っていたのは、有隣堂くらいでした。
最近の伊勢佐木町はどうなっているのかな?
もちろん、横浜市民が誇る有隣堂本店は健在ですが、いまはなき松坂屋の跡地に、新しい商業施設「カトレヤプラザ伊勢佐木」が今年の2月に誕生したそうですね。
4年前に、創業144年の歴史に幕を閉じた松坂屋ですが、そのアールデコ調の外壁は今も残されているとは、なんともうれしい心意気!
私が大好きだったババが着古した着物を受け継いだように、カトレヤプラザも、残された松坂屋の外壁を守り続け、そのまた次の世代へと受け渡していってほしいです。
もう何年も、伊勢佐木町に足を運んでいませんが、近いうちに、ババの着物を着て、伊勢佐木町散歩、楽しみたいと思います。
(タレント)