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| ■『有鄰』最新号(P1) | ■『有鄰』バックナンバーインデックス | ■『有鄰』のご紹介(有隣堂出版物) |

| 平成22年1月1日 第506号 P3 |
| ○特集 | P1 | 我が青春の文学放浪 北方謙三 | |
| P2 | 『仏像のひみつ』は人間のひみつ | ||
| ○海辺の想像力 | P2 | 典型的日本人 | |
| ○人と作品 | P3 | 小池昌代と『転生回遊女』 | |
| ○有鄰らいぶらりい | P3 | 山藤章二・尾藤三柳・第一生命:選『「サラ川」傑作選』/土屋賢二:著『教授の異常な弁解』/池内紀:著『東京ひとり散歩』/たからしげる:作 東逸子:絵『想魔のいる街』 | |
| ○類書紹介 | P4 | ロボット…ヒトの姿に似たヒューマノイドロボットと人間の共存を考える。 |
| 人と作品 |
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天涯孤独となった女の子が成長していく姿を描く
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| 小池昌代氏 |
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| 母と同じ女優の道へ向かって旅立つ |
母が事故死し、天涯孤独となった片山桂子は18歳。 母と同じ女優の道を進むことを決意し、親友が暮らす宮古島へ旅立った――。 『転生回遊女』は、小池昌代さんが刊行する初の長編小説である。 「ずっと短編で自分と等身大の40、50代を書いてきましたが、長編で10代の女の子を書き始め、主人公と一緒に私も成長していく実感がありました。 そこで18歳を主人公に、改めて長編に挑戦したのがこの小説です。 書き始めると、1年12回の連載で収まりきらず、15回で終え、さらに加筆して、まだ書き足りない。 その増殖感がすごく面白く感じました。 ひとつの世界を瞬間的に立ち上げる手法で詩と短編はほぼ同じですが、長編は、電車やバスに乗ってぐんぐん前に、水平に進み、どこに出るかわからないスリルがありますね」 宮古島、那覇、東京。 桂子は留まることなく転がり続け、やがて初舞台に臨む。 ガジュマル、ハイビスカス、ギンネム、大公孫樹……。 各章のタイトルに、樹木の名が多用されている。 「私自身がここ数年、生きるのが辛く、手を伸ばしても足を踏み出しても、コツコツガツガツぶつかる感じで、枝をさーっと伸ばしていく植物のように生きられたらいい、野性的に生きる感覚をどうにかして取り込めないかと、もがいていました。 その思いが桂子に重なり、主人公と一緒にころころ転がるように書いていきました。 ツタが伸びて絡んでいくように、樹木が樹木を呼び、緑が生い茂っていくように書いてみようと」 死んだ母が折りに触れて桂子のもとに現われる。 その声を聞き、芝居を志す人々や沖縄の人々と出会い、桂子は成長していく。 〈愛の労働、そんなものがあるとして、それこそがわたしの天職なのではないか〉。 川端康成文学賞を受けた短編「タタド」もそうだったが、葛藤する人間の前に海が広がっている。 「肉体が滅んでも声は記憶の中に生き続ける。 声とは魂のようなもので、桂子は死んだ母の声によって背骨を伸ばしてもらいます。 『タタド』の場合は海、この作品の場合は海、樹木と、私には、現代社会と自然とをどこかでリンクさせようとする作品が多いと思います。 『タタド』でテレビ業界の男を登場させましたが、マスコミに関わって、創造したものをお金に換えていくのは、自分の身を削るような作業です。 身を削って創り出したものを生きるために売る過程で疲弊する。 辛さを解放してくれるものとして、自然の力があると思います。 今は、ただそのままの存在を肯定してくれる、ゆったりといつまでもいていい、木陰のような空間がなかなかない。 電車に乗るのでも機械的に承認を受ける、関所のようなところが多すぎ、人の底に流れる原始的な力が押し込められている感じがします」 |
| 詩の創作を経てエッセイ・小説へと活動の幅を広げる |
東京・深川生まれ。 津田塾大学卒業後、法律雑誌の編集に携わりながら詩を投稿。 97年、詩集『永遠に来ないバス』で現代詩花椿賞、2000年、『もっとも官能的な部屋』で高見順賞を受賞。 エッセイ、小説へと活動の幅を広げ、2001年、『屋上への誘惑』で講談社エッセイ賞、2007年、「タタド」で川端康成文学賞。 2008年は詩集『ババ、バサラ、サラバ』で小野十三郎賞を受賞した。 「言葉がやれることは小さく、無力感を覚えますが、2009年に出版した『通勤電車でよむ詩集』がじわじわ売れていることを考えると、少しずつでも誰かに届いているのだと思います。 毎日働いて辛くても、詩の力によって一瞬解放され、現実と違う次元に心が跳び、何かを持ち帰って、再び現実で生き直す。 詩によって楽に呼吸させてもらった経験は私にもあり、それが詩の働きと言っていい」 2010年春に新詩集を刊行予定。 以降は、小説に注力するという。 「子供の頃は梶井基次郎などの詩小説が好きでしたし、中学時代に大好きだった山之口貘の詩は非常に散文的で、私が小説を書き始めたのは自然な流れでした。 詩の働き、要素が私にとって一番大切なものですが、詩作では常套的な言葉を避けて、たくさん捨ててきました。 けれども、平凡なありきたりな言葉が人と人の間を行き来して豊かなものに変わっていくのが日常ですから、今度は、詩人として捨て去ってきた平凡な言葉を拾い、当たり前の普通の言葉で小説を書いていきたい。 今回の長編は、私が小説というジャンルに本気で取り組んだ初めての作品です」 |
| 『転生回遊女』 1,785円(税込) 小池昌代:著 小学館 (青木千恵) |
| 有鄰らいぶらりい |
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山藤章二・尾藤三柳・第一生命 選 『「サラ川」傑作選』 講談社 1,050円(税込) |
土屋賢二:著 『教授の異常な弁解』 文藝春秋 1,300円(税込) |
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著者は、たいがいの男なら羨ましがるであろうお茶の水女子大学の哲学科教授。 にもかかわらず、帯には、〈助手、女子大生、女子高生、そして妻。 あらゆる女性から軽くあつかわれる現実。〉とあり、さらに〈その中でサバイバルする道を模索するツチヤ教授「苦闘の軌跡」〉とつづく。 ユーモアや滑稽には、しばしば、自虐や加虐(マゾやサド)が入るものだし、他人の不幸は鴨の味でもあるが、これほどのものは珍しい。 中でも「すぐ怒る妻」への怯えは相当なもの。 しかし、「妻の母親以外の人にはなかなか信じてもらえない。 大げさに書いているだけだと思われる」からだと嘆いている。 妻自身も「従順」で「夫を立てる妻」には絶対になりたくない。 それなら「我を張る」と言われたほうがいいとおっしゃっているというから全くの誇張ではないらしい。 すぐ怒るのは夫に対してだけではない。 日本では喫茶店、スーパー、病院、銀行。 英国では「ロクに英語はできない」のに、腹を立てると英語で怒鳴ることができるという。 「わたしはこの部屋を憎む。 なぜならこれは悪い」「この部屋は三角形。 私は三角形ではない。 そして狭い。 チェンジ! 」といったホテルでのやり取りがおかしい。 |
池内紀:著 『東京ひとり散歩』 中央公論新社(中公新書) 777円(税込) |
兵庫県姫路市―まわりにはいつも目印の山があり、町外れには川が流れている関西の城下町に育った著者は、18歳で東京に来たとき面食らったという。 東京には、どこにも山がなく、まわりは家ばかり。 はじめ住んだ北区の滝野川には川は流れていなかった。 近くにある飛鳥山に行ったら、ちっぽけな丘だった。 しかし、そのうち、雑然とした家並みの中に、郷里の城下町でも目にしない古い瀬戸物屋があり、壺や鉢から笊まで商っているのに気づいた。 アパートの近くに一里塚があり、江戸幕府が開かれた翌年にあたる慶長9年の年号が刻まれている。 少し歩くと古河庭園に行き合い、ツツジが咲き乱れていた。 雑駁なだけと思っていた板橋駅前近くに近藤勇と土方歳三の碑を見つけた。 滝野川から移った豊島区雑司ヶ谷には、鬼子母神の寺があり、境内には樹齢500年という大イチョウがそびえ大祭には数百の提灯がともる。 チンチン電車の線路わきを歩いていたら、町工場の入り口に「山吹の里碑」を見つけた。 鷹狩りに来て、にわか雨にあった太田道灌が、農家の娘に蓑を借りようとしたら、山吹の小枝を差し出されたという有名な話である。 こうした目で東京を歩くと実に興味深い光景にあふれていることを教えてくれる本である。 |
たからしげる:作/東逸子:絵 『想魔のいる街』 あかね書房 1,365円(税込) |
夏休み。 小学5年生の有市は、母親を亡くした悲しみを克服できないまま、うちひしがれる妹の面倒をみ、多忙な父親には慰められず、家事を手伝いにきた祖母にはつらくあたる毎日を送っていた。
そんなある日、祖母とのいさかいがきっかけで、自転車に乗ってひとり家を飛び出すが、車にはねられて意識不明の重体におちいってしまう。 気がついたとき、有市の母親はまだこの世に生きていて、長期療養のために入院している、という不思議な世界にいるのだった。 そこで出会った謎の男「ソーマ」は有市に、「この世界はきみが作った、本来はあるべきはずのない世界なのだ」と説明する。 そして有市を、人の願いや欲望が作りだしたものの、一皮むけば闇しか残らない、バランスに欠けたさまざまな世界を案内してみせる。 母親を亡くした現実をなかなか認めることができなかった少年が「ソーマ」すなわち「想魔」と出会い、予想もしていなかった冒険をくぐり抜けることによって、失っていた自分を取り戻す。 SFによる少年の成長物語。 装画も幻想的で美しい。 (K・K) |
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