本の泉 清冽なる本の魅力が湧き出でる場所…

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第110回 2010年11月18日


●執筆者紹介●


岩堀華江

「本の泉」執筆メンバー
有隣堂厚木店
文芸書・文庫を担当

本と映画、そして音楽がないと生きていけないと思っています。


加藤泉

「本の泉」執筆リーダー
有隣堂アトレ恵比寿店

仕事をしていない時は
ほぼ本を読んでいる
尼僧のような生活を送っている。

磯野真一郎

「本の泉」執筆メンバー
有隣堂 販売促進室
書籍仕入・販促担当

晴れて気持ちのいい休日は、自転車で遠くの公園に出掛けて本を読んでいます。

広沢友樹

「本の泉」執筆メンバー
有隣堂アトレ新浦安店
文芸書・コミック等を担当

書評と建築、そして居心地の良いカフェや図書館が好きです。

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ちょっと気になるお隣さん
 

家族をテーマにした小説はたくさんありますが、今回はお隣にこんな人たちが住んでいたら気になってしまう、少し変わった家族が登場する本をご紹介します。


 
 
まずは本多孝好『at Home』をご紹介します。
この本には、様々な家族のかたちを描いた4つの短編が収められています。どの話もあたたかな余韻が心地よい素敵な物語で甲乙つけがたいのですが、私の中では表題作「at Home」が一番深く心に残っています。
空き巣で生計を立てる父親、結婚詐欺でそれを支える母親、偽造屋で働く長男、そして妹と弟。周囲の人に知られたら大騒ぎになるような一家ですが、今のところその気配もなく家族5人で仲良く暮らしています。
ところがある日、母親が窮地に追い込まれたことから物語は思いもよらぬ展開へ。
母親を救うため闘う彼らの姿から伝わってくる「何があってもかけがえのない家族を守る」という強い想いは心にぐっときます。
物語の終わりは登場人物たちの新たなスタート地点となり、きっと彼らのこれからは彩りが加えられた明るいものとなるのでしょう。
自分の帰る場所、そこに待っていてくれる人がいるというのはとても幸せなことなのだなあと思いました。

 
at Home・表紙画像
at Home

本田孝好:著
角川書店
1,575円
(5%税込)

 
次は伊坂幸太郎『オー!ファーザー』です。
ひとつ屋根の下、母1人、子1人、そして父は4人!?
女性に目がない元ホストの葵、直感で生きているギャンブル好きの鷹、知識人で大学教授の悟、格闘マニアでたくましい中学教師の勲。皆それぞれ異なる魅力をもつ父親たちで、主人公である由紀夫の母・知代さんが二股ならぬ四股をかけてしまったのも納得できます。本編にはあまり登場しませんが、同時に4人の夫を持つほどですから知代さんもきっと素敵な人なのでしょう。
家族6人仲よく暮らしていますが、由紀夫はトラブルに巻き込まれてしまいます。一見無関係な事柄がどんどん繋がっていくストーリー展開は爽快で読んでいて楽しく、それぞれの特技をいかし抜群のチームワークで愛する息子を助けようとする父親たちの姿はとても格好よい!
不意に由紀夫はそんな父親たちの姿に時の流れを感じ、誰かが欠けてしまった時のことへ思いをはせ、心許なさにおそわれる。その気持ちにはおおいに 共感でき胸に迫ります。
11月末に待望の文庫化となる『ゴールデンスランバー』とあわせて伊坂幸太郎の世界をお楽しみください。

 
オー!ファーザー・表紙画像
オー!ファーザー

伊坂幸太郎:著
新潮社
1,680円
(5%税込)

 最後は森見登美彦『有頂天家族』です。
平安時代から続く狸の名門・下鴨一家。
土壇場に弱い長兄・矢一郎、蛙に化けたまま井戸で暮らす次兄・矢二郎、面白主義が過ぎ、時に周りの迷惑となってしまう三男・矢三郎、そして化けても尻尾をだしてしまう四男・矢四郎。この頼りない四兄弟が一族の誇りをかけ、京都の街を駆け廻ります。
狸・天狗・人間が三つ巴を繰り広げる、森見作品史上これまでになく波乱万丈な「ふわふわの毛玉ファンタジー」。はたして下鴨一家は父親と同じく狸鍋にされてしまうのでしょうか?
ライバル狸・夷川家との化かし合いは少しずれていて、彼らが真剣な分、なおさら可笑しく感じられ、母親の深い愛情やいざという時にみせる四兄弟の強い絆は、人と変わらずホロリとさせられます。
妄想の世界の中でキラリとひかる家族の愛情、そのギャップこそがこの本の魅力なのです。

 
有頂天家族・表紙画像
有頂天家族


森見登美彦:著
幻冬舎
720円
(5%税込)
 


文・岩堀華江


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