こっこは「凡人」が嫌いで、特別なものドラマチックなものに憧れている。幼なじみ「ぽっさん」の吃音を真似することはどうしていけないのか、こっこには分からない。「普通」と違ってめっちゃカッコいいのに。不整脈の発作を起こしたクラスメイトの真似をすることはどうしていけないのか。ボートピープルも在日も、どうしてタブーとされているのか。誕生日を祝うのはなぜなのか。新しい家族が生まれることはどうして無条件にめでたいことなのか。こっこは悩み、考える。そんな矢先、夏休みに遭遇したある不可解な出来事。こっこは「孤独」の真の意味を知るようになる。
隅々にまで愛すべき登場人物たちを配し、にぎやかな会話がエネルギッシュな空気を生み出し、ユーモラスなエピソードがちりばめられていて、実に痛快な物語だ。が、本書の最も見事な点は、そういった明るさの裏に、人はみなこの世に生まれ落ちた瞬間から死に向かって走っているというテーマが貫かれている点である。本書は、こっこが成長するさまを描いた物語であるが、成長するとはすなわち死に近づいているということでもあるのだ。
人は誰しも「死」から逃れることはできない。それは抗えない事実だ。でも、だからこそ、人はかけがえのないものを一つでも多く見つけようとするのではないか。「孤独」を知った者こそが他者をいとおしく思えるのではないか。本書の美しいラストシーンはそのことを私たちに教えてくれる。いま悲しみの底にいる方々に、あの紙吹雪がふりそそぐことを祈ってやまない。