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本命・道尾秀介 『月と蟹』 (文藝春秋)
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悠木: |
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道尾秀介は5回目の候補です。しかも第140回から連続して5回目です。そろそろ受賞してもおかしくないでしょう。
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平尾: |
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文春だしな。まあ、鉄板なんだろうけどな、この作品がこの作家の最高傑作なのかというと違う気がするんだよなあ。
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悠木: |
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はい。ミステリー色が弱いので初期の道尾作品が好きな読者には求心力が弱いかもしれませんね。
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野口: |
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でもやっぱり巧いのは確かですよね。この作品の主人公は小学生ですが、自分が小学生だった頃の暗い不安感みたいなものを思い出しました。
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平尾: |
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お前がそんなに暗い小学生だったとはな。
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野口: |
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えへへ。去年道尾さんがNHKの「トップランナー」という番組に出たとき、「来年の1月には直木賞をとる」と公言してたんですよ。余程この作品に自信があるんだと思います。これで獲れなかったら逆に問題になるかもしれません。
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平尾: |
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そうか、それで葉室麟が外されたのか…。
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野口: |
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え?
何ですって?
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平尾: |
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いや、なんでもない。
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悠木: |
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確かに、読み始めてすぐに感じる重苦しい空気感は道尾作品ならではですからね。ひとつのスタイルを確立しているという点は評価されるかもしれません。
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平尾: |
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そうだな。直木賞は安定した作家に与える賞という意味合いもあるだろうからな。ま、これが本命だろうな。じゃ、次いってみよう。
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