【1/28(木)追記】
先日、有隣堂たまプラーザテラス店のトラベルコーナーにて文房具トークイベントが開催されました。
トークゲストは人気文具コンサルタントの土橋正さん。
2016年1月の新刊『文房具のやすみじかん』(土橋正:文/小池壮太:絵/福音館書店/1,300円+税)をご執筆されました。
絵本では珍しい文房具の本、その製作過程のアレコレやこだわりの文房具についてお話を伺いましたよ。
文房具が好きな方や科学にご興味ある方はぜひご覧ください。
■絵本について
司会(以下「司」)土橋さんはこれまでにも多くの書籍をご執筆されていらっしゃいますが、絵本は初めてですか?
土橋さん(以下「土」)ええ、いままでは200~300ページくらいの本で大体数か月から1年かけて書いてきたのですが、この本は3年4か月かかりました!(笑)
司)そうなのですか! それではじっくり伺っていきましょう。まずこの本のコンセプトは?
土)文房具の基本は「書く」、「消す」こと。この本では、その「書くこと、消すこと」の仕組みについてお子さんにも分かりやすく紹介しています。
司)タイトル『文房具のやすみじかん』も気になりますが「やすみじかん」とは?
土)文房具たちにとっては、持ち主である小学生の男の子「まもる君」が勉強をするために彼らを使っている時が仕事時間なんですね。この絵本のストーリーはまもる君が学校から帰って宿題を終え外へ遊びにいくところから始まっていて、そこからが文房具の休み時間。その休み時間で繰り広げられる秘密の世界のお話です。
司)文房具版『トイ・ストーリー』みたいですね!
■絵本作りってむずかしい
司)本書執筆でご苦労されたところは?
土)少ない言葉で分かりやすく、専門用語も使わず、説明するのは本当~に!難しいことでした。
司)どんな流れで制作されたのでしょうか?
土)32ページという限られたページ数で伝えたいことを盛り込まねばならないので、ボードに32ページ分の台割りを先に作って、(こんな風に↓)
そこに書きたいポイントを割り当てていきました。登場文具のキャラクター設定も最初に行っています。主人公の鉛筆くんは、すこしおっとりしたマイペースな感じ、僕がモデルかも(笑)。
司)なるほど~。背が高くスタイル抜群で穏やかな土橋さんはたしかに鉛筆くんに似ています(笑)。
土)消しゴムさんはしっかりもので少し勝ち気な性格、砂消しさんは頑固おやじ。
司)その設定作業は楽しそう。それぞれの文房具の特性もとらえているイメージですね。
土)私の作った文章をもとに絵担当の小池さんに描いて頂きました。その絵を文章とセットして、文章、絵の調整を何度も繰り返していきました。それこそ「書いては消し」を繰り返しながらです。
(ここで、絵本ができる前の鉛筆書きのラフスケッチや、色づけして文房具に顔がついたイラスト入りの見本を披露!セリフや説明文の修正指示は、下絵が見えるように数センチ四方のトレーシングペーパーに書き込んで貼られています。これは大変!)
司)絵を担当された小池壮太さんはどのような方なのですか?
土)小池さんは油絵の洋画家さんです。写実的な作品を得意とされ、作品の多くは静物画や風景画が中心で、まるで写真のようですよ。小池さんの持ち味は、対象物の質感、たとえばツルツルとかザラザラといったことを描きわけられるところ。個人的に好きなのはP.8、9の鉛筆のアップ。木と芯のザラザラ感がつたわってくるでしょう。
司)たしかに。本物の鉛筆に見えますね。
土)そのリアルな絵に顔がついているギャップが好きなんです(笑)。
■これからの子どもたちにとってあたりまえの世界を描く
司)昭和世代の私たちには衝撃的だった消せるボールペン「フリクション」が登場していますね。
土)当初は入れていなかったんです。でも今「フリクション」を知らない人、使ったことがない人はほぼいないでしょう。あってあたり前の文房具。これからの子どもたちにとっては、ある意味でボールペンは消せるものと捉えられることになるだろうと考え、入れることにしました。この絵本が長く読まれてほしいとの願いも込めています。
■土橋さんのとっておき
司)一番お気に入りのシーンは?
土)P.8の鉛筆が書ける仕組みのところです。紙は一見平らに見えるけれど、凸凹の繊維でできています。その凸凹に黒鉛のかけらが乗っかっているというところが小池さんの写実的な描写で表現されています。「書くこと」は文字という立体物を作っているということを、実はこのページを見て明確に意識するようになりましたね。
司)隠れたエピソードは?
土)消しゴムさんのスリープ(カバー)に「PRIESTLEY」とあるのですが、これは実は、消しゴムの歴史を作ったイギリス人の自然哲学者プリーストリーの名前。鉛筆で書いた文字をゴムで消せることを発見した人です。小池さんのアイデアでイラストに描いてくださったんです。驚きました。
司)知る人ぞ知る歴史がここに! すごいですね!
■文房具の科学!書くこと、消すことの仕組みを実感してみよう!
後半は、絵本にちなんで鉛筆と消しゴムの魅力を再発見するコーナー。土橋さんの解説のもと、参加者のみなさんに体験していただきました。
グリーンの文字は、土橋さんが紹介してくださったおすすめアイテムです。
①土橋さんおすすめの2B鉛筆を書き比べてみる。
・三菱鉛筆 ハイユニ
・トンボ鉛筆 MONO100
・ステッドラー マルスルモグラフ
(当日は、ファーバーカステル カステル9000 もご紹介いただきました)
土)同じ2B鉛筆でも書き味は結構違いますよね。どれが一番ということではなく、自分に合うものを選んで使いたいですね。
鉛筆は、黒鉛と粘土の配合割合でBやHBが決まるものなんです。黒鉛の方が多くなるとB、2B、3B……となって、逆に粘土が多くなるとH、2H、3H……となります。ちなみにHは「HARD(硬い)」、Bは「BLACK(黒い)」。
硬いと柔らかいではなく、硬いと黒いという違う尺度なのが、なんとも不思議。
②消しゴムが文字を消すしくみとは?
・シードレーダー S60
土)筆跡の上から消しゴムをスタンプのように押してみると、消しゴムには黒鉛がくっつく。これが「吸い付けている」ところ。
次にゆっくりとこすってみると、吸い付けた黒鉛を瞬時に消しゴムの体からはがしているのがわかりますか?
さらには、土橋さん御用達の 肥後守 を使って鉛筆削りを実演してくださり、鉛筆を長く大事に使うための便利なアイテムもご紹介くださいました。
・クラウングループ 補助軸 シルバー CR-HJ70-CR
・ステッドラー ペンシルホルダー 900 25 シルバー
今日は、『文房具のやすみじかん』の絵本を通して、誰もが使う鉛筆と消しゴムといった小さな文房具の世界のお話を土橋さんに伺いながら、「書くこと、消すこと」のしくみを実感して、大きな感動と発見を皆さんにはお持ち帰りいただけたかと思います。
最後には、土橋さんご著書をお買い上げの方にサインをしてくださいました。
土橋さん、ありがとうございました!今後も一層のご活躍をスタッフ一同、応援しています! また遊びにいらしてくださいね。
ご参加くださいました皆様、福音館書店さん、ありがとうございました!
会場となった有隣堂たまプラーザテラス店にて、2016年2月17日(水)まで、土橋正さん『文房具のやすみじかん』にちなんだおすすめ文房具と関連本フェアを開催しております。
こちらもぜひお立ち寄りください。
土橋正さんプロフィール
ステーショナリーディレクター、文具コンサルタント。
文具の展示会「ISOT」の事務局を経て土橋正事務所を設立。国内・海外の文具メーカーを対象に商品企画やPRのコンサルティング、ショップを対象に文具売り場のプロデュースを行っている。
文具ウェブマガジン「Pen info.jp」で、文具コラムをはじめ、海外の文具展示会レポートなど様々な情報発信を行っている。
新聞・雑誌などの文具特集にも多数参画している。
【開催情報】
『文房具のやすみじかん』刊行記念!文具コンサルタント土橋正さんトークイベント
文具コンサルタントとして各地のトークショーや執筆活動などでひっぱりだこの
オトナな雰囲気漂う土橋正さんが初の絵本を刊行されます!
鉛筆はどうして文字が書けるの?
消しゴムで文字が消えるヒミツを知ってる?
じゃあ色鉛筆は消しゴムで消せないのはなぜだ?
絵本製作のウラ話や文房具の素朴な疑問、
土橋さんのこだわりの一品紹介まで、気さくに伺いますよ!
トークショー終了後は「鉛筆書き比べ」や「消しゴム」が文字を消すしくみを実際に体験して頂きます!お楽しみに!!
文房具好きな方はもちろん、科学に興味のある方、
お子さんと一緒にどうぞお気軽にご参加ください。
(参加方法)
どなたでも自由にご参加頂けます!参加費は無料です!
ご希望の方には参加の席の予約を承ります。
・1/4(月)10:00よりお電話および店頭でご予約を受付いたします。
・ ご予約いただいたお客様の参加整理券は、サービスカウンターでお渡しいたします。
電話でご予約された方はお名前とお電話番号をお申し付け下さい。
(当日の注意事項)
・ 当日はお好きな席へご着席下さい
(参加整理券の番号順ではございません)
(当日のタイムスケジュール)
14:00~14:35【トークショー】
第1部「文房具のやすみじかん」絵本について
14:40~15:00
第2部「鉛筆の魅力再発見 鉛筆を楽しもう」
15:00~15:15【サイン会】
ご希望の方に「文房具のやすみじかん」に土橋さんがサインを致します!
ご希望の方はイベント当日までに「文房具のやすみじかん」をお買い求め頂きご持参ください。
土橋さん×有隣堂 おすすめ文房具フェア開催致します
期間/2016/1/18(月)~2/17(水)
土橋さんがおすすめする文房具と書籍を一同に集めました!!
ぜひこの機会にお手にとって御覧ください!!
書籍名 | 著者 | 出版社 |
---|---|---|
文房具のやすみじかん | 土橋正 | 福音館書店 |
モノが少ないと快適に働ける | 土橋正 | 東洋経済新報社 |
文具上手 | 土橋正 | 東京書籍 |
文具の流儀ロングセラーとなりえた哲学 | 土橋正 | 東京書籍 |
仕事にすぐ効く魔法の文房具 | 土橋正 | 東京書籍 |
ステーショナリーハック! | 小山龍介 土橋正 | マガジンハウス |
考える鉛筆 | 小日向京 | アスペクト |
文房具名 | 種類 | メーカー |
---|---|---|
ハイユニ 2B | 鉛筆 | 三菱鉛筆 |
MONO100 2B | 鉛筆 | トンボ鉛筆 |
マルスルモグラフ 2B | 鉛筆 | ステッドラー |
カステル9000 2B | 鉛筆 | ファーバーカステル |
レーダーライト 60ピンク | 消しゴム | シード |
補助軸 シルバー CR-HJ70-CR | 補助軸 | クラウングループ |
ペンシルホルダー 900 25 シルバー | 補助軸 | ステッドラー |