【Book】サイトウユウスケ『Chuck and the Girl』に寄せて

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STORY STORY YOKOHAMA

「ワンダーイヤーズ」。
この本の宣伝コピーに書かれていたワードだ。

数々のミュージシャンのアートワークを手掛けてきたサイトウユウスケ氏の初コミック作品。
いい意味で力が抜けていて、風通しが良くて、余白が活きている。
あるきっかけで祖母が暮らす横浜にアメリカからやってきたエイミー。
元町の丘の上に住むテル子おばあちゃんと、近くの中学に通う絵が好きなケンタ、ネコのチャックとの楽しく平和な日々。

いつまでも変わらないと思っていたものが、少しずつ壊れていくとき、怖くて目を背けてしまったエイミーの幼さ、純粋さ。
人生のすべて、いいこともうまくいかないことも、すべてがその先の未来につながっていくかけがえのない瞬間なのだと教えてくれた祖母の大きな愛・・・

その昔、NHKの海外ドラマで「素晴らしき日々」というアメリカの作品を放送していた。
オープニング曲はJoe Cockerが歌う、With a Little Help from My Friendsだった。
ベトナム戦争前後に思春期を過ごすケビンの成長物語だった。
コメディというよりは、彼のコンプレックスや、未熟な自分自身と他者への欺瞞に翻弄される等身大のケビンが少年から青年へと変わっていく姿からボクは不思議と目がそらせなかった・・・

懐かしい日々を思い出すとき、今につながっているからこそ、それらは輝かしく、愛おしいものに感じるのではないか、とこの「Chuck and the Girl」を読みながら、中年になったボクもそんなことを思ったのだった。

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店長 名智理

 

2024-12-23 | Posted in ヨコハマ, 本と雑貨

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