Web版 有鄰 第562号 ズーラシア20周年/植田美弥

第562号に含まれる記事 令和元年5月10日発行

ズーラシア20周年 – 海辺の創造力

植田美弥

よこはま動物園ズーラシアが開園して20周年を迎えました。私は開園準備スタッフとして採用されました。そして、私が最初に見たズーラシアは広大な工事現場でした。

工事現場が少しずつ動物園へと変わっていく中、ズーラシアに一番最初に入ってきた記念すべき動物はオオアリクイでした。1997年10月11日の事です。そして11月5日、待ちに待っていたオカピがアメリカからやってきました。これがオカピの初来日でした。アフリカゾーンの動物ですが、開園時はまだできていなかったので、現在のモウコノロバ舎へ搬入されました。その時点でまだ開園の1年以上前だったズーラシア。獣舎はできていても、展示場はまだできていません。工事現場の中に家があるような状態でした。大きな音で神経質な草食動物であるオカピが怪我をしないかと心配しました。

その後も少しずつ動物が増えていきました。展示場がなかなか完成せず、展示場に出す練習が思うように進まずに、本当に間に合うのだろうか?というバタバタの中、日々は過ぎていきました。ズーラシアはそのころまだ珍しかった生息環境展示を取り入れた動物園で、動物をその生息環境にいるような状態で見ることができるようになっています。ですので、動物がいる場所にかなり凝った植物が植えられていました。特にメガネグマの展示場はいろいろな木が植えられていたのですが、メガネグマは展示場に出る練習を始めた途端、次から次へと木をなぎ倒していきました。私たち獣医師は万一の脱走に備えて麻酔銃を構えて待機していましたが、その横で植物担当の職員が悲鳴をあげているのをかわいそうに思いながら聞いていました。結局いよいよ開園という時には樹木は半分以上倒されていました。

いよいよ迎えたオープンの日はものすごい土砂降りだったのを覚えています。そして気がついたら20年が経っていました。オープン当初は「動物が見えない」と言われていたズーラシアですが、20年の間にずいぶん変わりました。動物も環境に慣れたことと、飼育員の工夫のおかげで見えやすくなりました。日陰やベンチも増え、過ごしやすくなりました。

そこで、ズーラシアのおすすめの楽しみ方をお教えします。それは、エリアもしくは動物を決めてそこだけ時間をかけてじっくり楽しむという方法です。全面開園したズーラシアは横浜スタジアム約17個分の敷地があります。ぜんぶ見て回るのはとても大変です。たとえば、サバンナゾーンで1日過ごすというのはどうでしょう。バードショーを見たり、ピグミーゴートやヒトコブラクダと触れ合ったり、そしてサバンナ混合展示場のキリンやエランド、シマウマがゆっくり草を食べたり、のんびり歩いたりしているのを見ていると、本当にどこか遠い所に来たような気がしてきます。

一度いらして、もう行かなくてもいいやと思っていらっしゃる方も、是非もう一度遊びにいらしてください。20年前よりずっとバージョンアップしたズーラシアをお楽しみいただけるはずです。

(ズーラシア獣医師)

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