Web版 有鄰

550平成29年5月10日発行

江ノ電は幸せもの – 海辺の創造力

深谷研二

今年も湘南の海が眩しく、丘陵の若葉が鮮やかに色めく季節が訪れました。昨今は年を重ねる度に、春夏秋冬四季を通じての季節感を、深く実感するようになりました。

とはいえ、北国のローカル鉄道では、社会変貌による厳しい事業環境と厳寒という自然環境の中で、如何に地域の足を健全確保していくか、筆舌に尽くし難い程の奮闘努力が日々続けられています。現在も懇意にしている津軽鉄道の澤田長二郎社長は津軽人らしい発想で、その逆境を「地吹雪ツアー」という観光資源に変え、ハワイ・東南アジア等の南国からの誘致策に取り組むその熱意は、根雪をも融かす程ですので是非一度ご体験下さい。

江ノ電は1902年(明治35)日本で6番目の電気鉄道として、藤沢~片瀬(現江ノ島)間3.4㎞を開業しました。8年後に鎌倉迄の10.0㎞を全線開業し、今年で115年を迎えます。この間社会事情の変化に伴う廃線の危機に面しましたが、先輩方の並々ならぬご努力で何とか乗越えることが出来ました。
お陰様で2014年度から年間1700万人を超える国内外のお客様にご利用頂いています。

また、その陰には江ノ電の魅力アップに地道に取り組む地域サポーターの存在があり、来訪客の好感を得ているので、拙書『江ノ電10kmの軌跡』で紹介させて頂きました。

一方、江ノ電は藤沢・鎌倉両市のパイプ役として広域連携の中心的役割を担うと共に、湘南藤沢フイルムコミッションにも参画して、湘南エリアを舞台とした映画製作に積極的に協力し、湘南の自然と地域特色を海外に発信しています。

特に親日国である台湾とは早くから観光交流を図っており、2013年4月には台湾鉄路管理局平渓線との観光連携協定を締結しました。これは双方の一日フリー乗車券を交換提供するもので、利用客の約75%がリピーターであることが把握できました。

江ノ電は首都圏から日帰り可能という地の利があり、「江ノ電に乗ってみたい」というお客様の素朴な気持ちを誘致策の原点として、国内外のリピーター醸成に取り組んでいます。もちろん板張り床のレトロ電車にも、まだまだ頑張ってもらわねばなりません。

眼前に迫った2020オリンピック・パラリンピックでは江の島がヨットセーリング会場になります。「周り易い、使い易い」バリアフリーからカード決済システムまで、ハード・ソフト両面でのユニバーサルデザイン化が喫緊の課題です。おもてなしのあり方はこの数年「物から心へ」と大きく変わってきています。3年後のオリンピックの成功可否が、訪日客年間目標4000万人達成とその後を大きく左右することは言うまでもないことでしょう。

(江ノ島電鉄株式会社前社長)

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